こんにちは、まろです。
ジャグラーは普段から沢山の種類の技の練習をしていますが、全ての技を本番で使えるわけではありません。
まだ成功率が低い技を本番で挑戦するのはギャンブルのようなもので、本番での緊張が加わるとさらに成功率は下がります。
ではどれくらいまで技が安定したら本番に使うことができるのか?ということについて、今回は解説していきます。
1.そのステージのリスク許容度はどれくらいか
ステージで失敗しない演技をすることが前提なら、自分の能力のリミットを少なくとも1~2割下回る技を選択することになります。
リスク許容度が「絶対に失敗をしたくない」というほどであれば、5割~6割程度でできるところまで技のレベルを落とすこともあるでしょう。
- リスク許容度「大」→技のレベル「高」
- リスク許容度「中」→技のレベル「高~中」
- リスク許容度「小」→技のレベル「中」
ということです。
リスク許容度が大きいステージの筆頭はジャグリングフェスティバルなど、メインの観客がジャグラーの場合です。
ジャグラーは難易度の高い技への挑戦そのものを理解してくれるし、ジャグリングにドロップは付き物ということを知っているからです。
逆にリスク許容度が小さいステージはTVなどの生放送、ブランドのショーやファッションショーのステージなどです。これらはそのイベントの世界観を作ることが大事なのであって、ジャグラーのエゴや技術の難易度は求められていません。
本番での予期しないドロップやミスは簡単にその世界観を壊してしまいます。
一番多いのがリスク許容度が中くらい、ドロップはしたくないけれど1ミス、2ミスくらいまでは許容範囲というステージです。
サーカスやヴァリエテなどショービジネスのステージは大体これくらいのことが多いです。
基本はノードロップが前提ですが、ジャグラーはミスをする日もある、それくらいの感覚。
2.本番で使える技の判断基準
本番で使える=本番でほぼ成功する
という基準で解説します。
本番で使える技の基準として、良くある話が
10回中10回成功できるようになったら本番で使える
というのがあります。
練習で10割成功できていれば、本番でもある程度計算できる…それも一理あります。
そして個人的には練習で10回連続で成功できるなら、その技は本番で「挑戦しても良い」と思います。
ただ練習で10割できても、同じことができなくなることがあるのが本番です。
そのことを踏まえてさらに厳しい基準を持ったジャグラー達の言葉を紹介します。
Viktor Kee
Viktorがサーカス学校で彼の先生に言われていた言葉として、
「10回中11回成功できるようになれ」
というものがあります。
何回やっても絶対に成功できるレベルまで技を高める、その基準の高さが伝わります。
Olga Galchenko
「10回中10回成功するようになっても、実際は本番では十分じゃなかったわ。30回中30回成功するぐらいで本番で使えるようになった」
と彼女は語っています。
一見10回中10回というのは100%のようですが、それを実際に100回やってみたら100%の成功率は維持できない可能性も高いです。
つまり10回というのは100%の完成度を意味するわけではない。
30回中30回成功できれば本番でも信頼できる成功率だという彼女の経験則です。
Vova Galchenko
Vovaはウォーミングアップ無しでいきなりその技を成功させることができるなら、本番で使える技の良い基準だと語っています。
確かに様々なウォーミングアップをして準備万端で挑戦するのと、ウォーミングアップ無しで難しい技術に挑戦するのでは全く状況が違います。
ウォーミングアップ無しという身体的にもメンタル的にも整っていない状態は、ある意味普段通りのコンディションを保てない本番のシミュレーションにもなります。
悪い条件の中でも技を決められるなら、心理的にも本番に向けての自信になるでしょう。
3.演技の中で挑戦する場所を決める
どのようなステージでも、基本的にはドロップをしない、ミスをしない前提で演技を作っていきます。
そしてリスク許容度があるステージなら、その中で1か所か2か所、「挑戦する技」を入れます。
つまり全編通してどこでもドロップをしても良いわけではなく、あらかじめ計算の上でドロップするかもしれない場所を決めておくということです。
多くの場合それはナンバーズや最後の決め技になるでしょう。
失敗するかもしれませんが、その技に挑戦する意義がある、観客も挑戦を後押ししてくれる場所、ということです。
皮肉なことに素直に技が決まるよりも、一度失敗して二度目や三度目で成功した方が観客は盛り上がるということもあります。
それでもジャグラーとしては一回目で決めきる意識で、失敗しても構わないという考えが当たり前にならないことは大切なことです。
・最後に
初心者、中級者の内から完成度を上げようと意識しすぎると、演技や技も守りに入ってつまらなくなったり硬くなったりしてしまうこともあります。
なので最初の内はあまり難しく考えず、やりたい技にどんどん挑戦してみるのも良いと思います。
ステージでの経験を重ねることも、本番で力を発揮するためには非常に大切です。
失敗を恐れずに挑戦することで、段々自分が本番でどこまでできるのかということも見えるようになってきます。
そして経験を積んで出演するステージのレベルが上がったり、仕事として成立させる必要のあるステージが増えてきた時に、上で紹介した「本番で使える技の基準」を満たせるように、普段からしっかり準備をしていきましょう。
本番で奇跡を願うことはできません。
ウォーミングアップ無しでも演技で使う全ての技を決められる、そのレベルを目指していきましょう。