こんにちは、まろです。
ジャグリングは純粋に技術の向上を楽しんだり、仲間と交流を楽しむという面もありますが、大きな目で見るとどのレベルにしても誰かに自分のジャグリングを見せて楽しんでもらいたい、評価してもらいたいという目的があると思います。
例えば家族や友人、学校や職場でジャグリングを見てもらうことから、プロとしてショーをすることまで。
残念ながらただ人前でジャグリングを見せるだけでは、「あ、ジャグリングね」「見たことある」という枠の中で評価されてしまうことがほとんどです。高いレベルの技を取り入れても、「この間見ました!」と他の誰かと間違えられてしまったり。
もちろんジャグリングを見せれば技そのものには拍手はもらえるのですが、いわゆる「ジャグラーという枠の中の誰か一人」ではなく、「こんなジャグリング初めて見た」「今まで見たことがあるジャグラーと全然違う」というような評価を得たい人のための考え方を紹介します。
長文ですが記事の中の動画リンクは絶対に見ておいた方が良いジャグラー達なので、文章を読まずに動画を見るだけでも独自の演技作りの役に立ちます。
目次
1.どのような観客に見てもらいたいのか
・大きく分けて客層は2つ
まず自分のジャグリングをどのような客層に見てもらい、楽しんでもらいたいのかをはっきり理解していることが必要になります。
大きく分けて2つ、
- ジャグラーに見てもらいたい
- 一般のお客様に楽しんでもらいたい
もちろん両方の客層同時に楽しんでもらうということも可能ですが、それはその意識を持った上で演技を作る必要があります。
メインの観客がジャグラーだったら、複雑なサイトスワップや様々な3ボールの細かい技に盛り上がってくれたり、「ジャグリングそのもの」を見続けてくれたりします。
でも一般のお客様は延々と続く3ボールは正直技の違いは分からないし、3分もしたら飽きてしまうのではないでしょうか。
youtubeであなたが興味のない分野の動画を探して10分視聴することを考えてみてください。
例えばバレエ、日本舞踊、クラシック音楽、ルールの分からないスポーツ(ちなみに僕はバレエ、日本舞踊、クラシック音楽とも好きですが…)
どうでしょう?
もちろんそこで一流の演技、作品に触れて心が動くこともありますが、大抵の人は興味がない分野だったら「何かすごいな~」という感想だけで、長時間見続けることは難しいのではないでしょうか。
また個別の演者や選手の違いが一週間後も印象に残っているでしょうか。
逆にジャグリングの動画だったら10分でも見られるし、その後別の関連動画もクリックしたりするのではないでしょうか。
こうして考えると一般のお客様から見るジャグリングのイメージが分かりやすいと思います。
もちろんジャグリングは前提となる知識が必要ではなく、ぱっと見ただけで凄さが分かるので敷居が低いのですが、それでも興味が無い人に純粋にジャグリングの技で長時間楽しんでもらい、自分という個人を識別してもらうことは難しいと思います。
もう少し一般のお客様について分類すると、
- チケットを購入してサーカスや劇場に来てくれた人(有料)
- 企業パーティ、ホテルショーやテーマパークなどの来場者(間接的に有料)
- ショッピングモールのショー、地域イベントのステージなどの来場者(無料オープンイベント)
その上で
- ファミリー(サーカス、テーマパーク、オープンイベント等)
- 年配(老人ホーム等)
- 仕事世代(企業パーティ、ホテルショー等)
- 若者(学園祭等)
- 子供(学校公演、幼稚園、保育園、誕生日パーティ等)
まずどのようなステージかということでそもそものお客様の集中力、リラックス度や求められる内容も変わり、観客に伝わりやすい演技内容も違います。
ではそれを踏まえてどうやって他のジャグラーと違う演技を作っていくかということについて書いていきます。
2.他のジャグラーと違う演技を作る方法
大前提としてある程度のジャグリング技術を持っている必要があります。
当然の話ですが技術が無いのにオリジナルの演技をしようとしても、それを表現することはできません。
ただ大事なのは「ある程度」であって、必ずしも上級者や超上級者レベルが必要な訳ではありません。
目安としては「中級以上」でしょうか。
オリジナルの演技の考え方について、系統別に紹介していきます。
・ジャグリングの王道、超上級者レベルになる
技術だけではなかなか一般のお客様には伝わらない…という言葉と矛盾するようですが、誰もが知っているジャグリングのイメージの何段階も上の圧倒的なレベルまで突き抜けてしまうと、他に並ぶ人がいないという意味でそれはもはやオリジナルになります。
ある意味これはジャグリングの王道で、伝統的なサーカスのジャグラーはこのパターンでした。
観客がジャグラーでも、一般のお客様でもその技術で圧倒できる王道パターンです。
誰もが認めるテクニカルジャグラー、Anthony Gatto
ここについてはストレートに技術を圧倒的なレベルに高めるしかありません。
技術をより速く高めるための練習方法や考え方はあったり普段教えたりもしていますが、今回は割愛します。
・王道その2、新しいジャグリングのスタイルを作る
これは一般の観客というよりジャグラーにより評価される方法だと思いますが、ジャグリングに対する沢山の実験、アイデア、情報収集や研究の積み重ねで自分独自のスタイルを作り上げる方法です。
現代サーカス的なボールジャグリングの第一人者Stefan Sing
Stefanは2010年と2016年に東京でもワークショップを開催してもらったことがあります。
2016年は4時間x3日間だったのですが、実はStefanは5時間x5日間のワークショッププログラムを持っているということで、また開催希望者が多ければフルバージョンのワークショップを企画したいと思っています。
先日横浜新ジャグリングクラブで指導した内容のライングループ投稿から引用ですが、独自のジャグリングスタイルを作る上で参考になると思うので以下に項目だけコピぺしておきます。
- ボディスロー、キャッチ+ペンギン
- ロール系
- ボディラップ系
- ストール、バランス系
- はさみ、引っ掛け系
- マニピュレーション、フローリッシュ系
- バウンス系、-体、床
- 手でフォロー、プッシュ、プル
- 身体の動き、ハーフターンなどと組み合わせ
これらの項目をそれぞれ深堀りして、さらに複数を掛け合わせることで他の人と違う演技を作っていくことができます。ある意味これの無限ともいえるバリエーションを持ってそれを流れるように組み合わせているのがStefan Singのスタイルとも言えます。
気をつけないといけないのは真新しいスタイルを集めて、「オリジナルっぽい」演技を作っても、観客が知らないだけで当然それはオリジナルとは呼べません。
この点については以前演技の独創性とは?パクリやコピーに頼らない演技作りの大切さという記事を書いているのでご一読ください。
今回はある意味その続編、方法論についての記事ということですね。
・ジャグリングに表現、演技力やキャラクターを組み合わせる
ジャグリングの技はオーソドックスでも、そこにキャラクターを組み合わせるだけで無限にバリエーションを作り出せたり、観客の印象に残る演技を作ることができます。
マッドサイエンティスト風のキャラクターでのバウンスジャグリング、Emile Carey
・パントマイム、ダンス、アクロバットやコメディ、映像やテクノロジーなど、他のジャンルを取り入れる
もしあなたにジャグリング以外の特技があれば、それとジャグリングを組み合わせるだけですでに他の大多数ジャグラーとは違う演技を作ることができます。
ダンスやアクロバットに高度なジャグリングを組み合わせたVladik Miagkostoupovの演技。
パントマイムをTony Montanaroに師事したMichael Menesの3ボール。
・ジャグリング道具以外を使う
ジャグリングの技術はどんな道具にでも応用することができます。ジャグリング道具に形が似ているものから、似ていないものまで。
世の中には数えきれないほど物があるので、他の人が使っていない道具を選ぶだけで即「その人しかやっていない」ジャグリングになります。
例えば最新型iphone、スコップ、ギター、靴…
もちろんジャグリングのやりやすさ、どれだけ技を入れられるか、見栄えがするか、そもそも面白さや見事さはあるかなども考える必要はあります。
動画と一緒に例を挙げていくと
- 杖や果物など、ジャグリング道具以外の既に存在するものを使う
Drew Brownの杖を使ったジャグリング。実際はジャグリング用に短くしていますが一例として。 - ボールとテニスボールの筒、傘などジャグリング道具以外との組み合わせ
ジャグリング道具の他にも傘、ラケット、バトンなどを使ったFrançoise Rochaisのジャグリング。 - バウンスジャグリングとオリジナル形状の台など、ジャグリング道具+演技状況の組み合わせ
Cirque du SoleilのTOTEMオリジナルジャグラーのGreg Kennedyによるボールと三角錐ジャグリング。 - 新しい道具を作る
僕の例ですが大鎌をモチーフにした道具です。自分で作り出した道具はその時点で世界で唯一のものになります。
ジャグリング道具以外を使うというということでは上記のようなパターンが考えられます。
・3つ以上の要素の掛け合わせ
実際プロとしてショーをしているジャグラーは、3つ以上の要素を持っていることが多く、その要素が多いほど、そしてレベルが高いほど他に並ぶ人がいなくなっていきます。
Viktor KeeによるCirque du Soleiの公演Amalunaでの演技。
ダンス、キャラクター、演技の完成度からジャグリングの枠を超えた存在になっています。
Viktorは以前日本に招聘し、横浜でワークショップを開いてもらったこともあります。
2006年から個人的なつながりがあった上でパリで再会し来日してもらったのですが、彼はサーカス界のスーパースター&セレブなので呼ぶのもなかなか大変です…
Viktor Keeワークショップも上級者の参加希望者が多ければまた企画したいと思っています。
Cirque du Soleilの公演Quidamのクラウン、Jhon Gilkeyのボールと帽子掛けを使った演技です。
クラウンとしてのキャラクター、帽子掛けとの演技、ジャグリングの技術を見事に組み合わせています。
パリのサーカスフェスティバルCirque de DemainでのViktor Moiseevによる振り子ジャグリング。ダンス、キャラクター、演技、道具、完全に世界で唯一の演技になっています。ちなみにViktor Keeの生徒でもあります。
・他の誰とも違うジャグラーになるための考え方まとめ
まずはどのようなお客様を想定して演技を作るのか決めること。求めていない人にオリジナリティを提供しても心には届きません。
その上でジャグラーとしての王道は
- 世界一と言えるほどの圧倒的なジャグリング技術を身につける
- 数えきれないほどの新しい技、アイデアを蓄積し、独自のスタイルを作る
ただしこれは王道ではありますがある意味10万人のトップを目指すような考え方です。
ジャグラーである以上より高度な技術の追求は絶対に続けるべきですが、より誰でも取り入れやすいのが
- 複数の要素、技術とジャグリングの掛け合わせ
です。
この複数の要素は、2つより3つ、3つより4つと増えるほど、そしてそのそれぞれのレベルが上がるほど他に並ぶ人がいなくなります。
そしてある意味一番取り組みやすいのが
- オリジナルの道具を使う
ことです。
例えば今あなたの部屋で目についたものをジャグリングしてみてください。すぐに他の人はやっていないジャグリングをすることができると思います。
例えば電球ジャグリング、ごみ箱ジャグリング、ハンガージャグリング、豆腐ジャグリング…
上に書いたとおり、それがジャグリングに向いているか、面白いか、見事かどうかはまた別の話です。
もちろんただ手に取るだけでできるジャグリングということは、簡単にコピーされるということでもあります。
上に挙げた様々な例から考えれば、技術、道具、要素、他の人がやっていない組み合わせやアイデアは沢山見つけられるはずです。
それを最初から正解を求めるのではなく、沢山試して練習していくことで、オリジナルを作るセンス、感覚は磨かれていきます。
以上、他の人とは違うジャグラーになるアイデアのきっかけになると嬉しいです。